【なぜか狂気すら感じる、可愛らしいボサ・ノヴァ】 Busy Doin' Nothin' / The Beach Boys (1968)
『ぼくの家まではこんな道順だよ』
『電話しようと思ったら、メモが見つかんない。手紙でも書こうか~』
おおよそこんな他愛もない日常が歌われ続ける、
ブライアン・ウィルソンの(ほぼ)ソロ曲。
当時のブライアンはアルコールとドラッグ漬けで廃人同然。
精神が極限まで不安定な状態で、一日中引きこもっていたにも関わらず、
こんな愛すべき作品を生み出してしまいます。
これがブライアンの天才たる所以。
頭をくいっとひねれば、メロディなんて無限に出てきたんでしょう。
これほど個人的な内容にも関わらず、
ポップなメロディとこじゃれた管楽器アレンジによって、
収録アルバム『フレンズ』の中でも出色の名曲として存在感を発揮することになります。
僕はビーチ・ボーイズという、
なんとも人間臭くて欠陥だらけの集団がとても好きなんですが、
なんだかんだ一番再生回数が多いのはこのアルバムだったりします。
発表当時はビルボードTOP100にすら入らなかった失敗作扱いだったんですが、
近年はソフト/サイケ・ロックの名盤として様々なアーティストがフェイバリットに挙げている一枚。
ブライアン自身も一番好きだと言ったとか言わないとか。
一聴すると地味なんですが、
美しいメロと繊細なサウンドで全体に統一感があって、
かつところどころにブライアンならではの『天才的な閃き』と『狂気』が見え隠れしている点が、長年のリピートに耐えうる理由でしょう。